「危険物取扱者と毒物劇物取扱責任者は名前が違うだけ?」と思っている人も稀にいるようですが、2つはまったくの別物です。
簡単に言うと、危険物取扱者は火災に関するもので、毒物劇物取扱責任者は健康被害に関するものです。
今回は2つの資格の概要・受験資格を説明していくので、「違いがいまいちわからない!」という人は参考にしてください。
本ブログ筆者
- 化学科の現役大学生
- 危険物取扱者(甲種)
危険物取扱者について
まずは危険物取扱者について説明していきます。
どのような資格?
消防法で定められた”危険物”を取り扱うための資格です。
一定数量以上の危険物を扱う工場やガソリンスタンドなどの施設では、危険物取扱者を置くことが義務づけられています。
”消防法”といっている通り、危険物は燃焼・火災・爆発に関連するものとなっています。
その性質によって第1類から第6類の6つに分類されています。
以下の物質は、消防法で定められている危険物の一部です。
- ガソリン
- 灯油
- 軽油
- 赤りん・黄りん
- 硫黄
- ナトリウム
- 過酸化水素
これら以外にも定められている危険物が多くあります。
また危険物取扱者の資格は、甲種・乙種・丙種の3つに大きく分類されています。
3つの概要は簡単に次の通りです。
【甲種】
すべての危険物を取り扱えます。
【乙種】
第1類から第6類のうち取得した資格の危険物のみを取り扱えます。
よく耳にする「乙4(おつよん)」は、第4類の危険物のみを扱える資格のことです。
【丙種】
第4類のうちさらに限られた危険物のみを取り扱えます。
受験資格
乙種と丙種の試験は誰でも受験が可能です。
甲種の試験には以下の受験資格が定められています。
どれか1つを満たせば受験が可能となります。
【甲種の受験資格】
- 大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者
- 大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
- 修士・博士の学位を有する者で、化学に関する事項を専攻した者
- 乙種危険物取扱者免状の交付を受けた後、危険物製造所等における危険物取扱いの実務経験が2年以上の者
- 次の4種類以上の乙種危険物取扱者免状の交付を受けている者
・第1類又は第6類
・第2類又は第4類
・第3類
・第5類
以上の通り、大学などで化学を学んでいない人は受験資格を得るだけでもかなりの時間がかかります。
私自身は化学科に属しているので「15単位以上修得」という条件を満たし、いきなり甲種を受験しました。
毒物劇物取扱責任者について
次に毒物劇物取扱責任者について説明していきます。
どのような資格?
毒物劇物によって人体に害が与えられないよう、企業・会社内で管理するため資格です。
危険物は火災関連でしたが、毒物劇物は健康被害に関するものです。
毒物及び劇物取締法(第二条)によって定められており、例として以下の物質があてはまります。
- 水銀
- ヒ素
- アンモニア
- 過酸化水素
- 硫酸
毒物劇物を取り扱う製造業・輸送業の会社などでは、毒物劇物取扱責任者を登録する必要があります。
受験せずに資格を持っている人が存在する
危険物取扱者の資格を取るには試験に合格する必要がありますが、毒物劇物取扱責任者は試験を受けずども資格を持っている人がいます。
以下に当てはまる人は自動的に毒物劇物取扱責任者の資格を有しています。
- 薬剤師
- 厚生労働省令で定める学校で、応用化学に関する学課を修了した者
例えば、理学部(理工学部)化学科の大学生は卒業さえすれば、資格を得ることになります。
「応用化学に関する学課を修了した者」についてもっと詳しく(東京都福祉保健局)
受験資格
試験に合格することで毒物劇物取扱責任者の資格を得ることも可能です。
年齢・学歴を問わず誰でも受験できます。
まとめると、以下のいずれかに該当する人が資格を有しています。
- 薬剤師
- 応用化学に関する学課を修了した者
- 試験に合格した者
ただし、資格を持っていても18才未満の人や薬物中毒者は、会社などで毒物劇物取扱責任者として登録できません。
まとめ:危険物取扱者と毒物劇物取扱責任者の違い
今回は、化学系の2つの資格の違いについて説明しました。
なんだか名前が似ていて同じように思える資格ですが、まったく別物です。
「危険物は火災、毒物劇物は人体への害」と簡単に把握しておくといいでしょう。